同類

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「おおきに。でもこのままでええねん。こうなったら意地や!最後までこの格好でいたるで!」 そんなに強がらなくても、と思ったが口に出すのを止めた。 気持ちはよく分かる。というより、コートを脱がないでいる俺は同類だ。 「必要なときはいつでも言ってね」 俺達の顔は緩んだまま。 「ちょっとごめん」 俺は暫く席を外した。 「はぁ~」 俺から放出した水分が土に吸い込まれてゆく。・・・あれ?そういえば。 戻った俺は浮かんだ疑問をおっちゃんにぶつけた。 「トイレはどうしてるんですか?」 「それがな、今のところ全くもよおして来んねん、不思議やろ? 遭難した事のショックやろか? それとも飲まず食わずでいたからやろうか?」 「大の大人がお漏らししたら恥ずかしいですよ。早めに教えてくださいね」 「おおぅ」 俺達の笑い声は薄暗い森のなかへ響いていった。
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