261人が本棚に入れています
本棚に追加
「おおきに。でもこのままでええねん。こうなったら意地や!最後までこの格好でいたるで!」
そんなに強がらなくても、と思ったが口に出すのを止めた。
気持ちはよく分かる。というより、コートを脱がないでいる俺は同類だ。
「必要なときはいつでも言ってね」
俺達の顔は緩んだまま。
「ちょっとごめん」
俺は暫く席を外した。
「はぁ~」
俺から放出した水分が土に吸い込まれてゆく。・・・あれ?そういえば。
戻った俺は浮かんだ疑問をおっちゃんにぶつけた。
「トイレはどうしてるんですか?」
「それがな、今のところ全くもよおして来んねん、不思議やろ? 遭難した事のショックやろか? それとも飲まず食わずでいたからやろうか?」
「大の大人がお漏らししたら恥ずかしいですよ。早めに教えてくださいね」
「おおぅ」
俺達の笑い声は薄暗い森のなかへ響いていった。
最初のコメントを投稿しよう!