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正確には“出会った”のではなく、熊は倒れていた。
寝ているのか死んでいるかも判らない。とにかく今は逃げることが先決だ。
ゆっくり、ゆっくり・・、音を立てないように・・・
!!!
「フウン・・・フウン・・・」
熊が声を発した。俺は慌てて木の後ろに隠れる。
「・・・タ・ス・ケテ・・・」
!!! 小さくてよく分からなかったが「助けて」と熊がしゃべった。
俺は目を細めて樹の陰から倒れている熊を注意して見てみる。
緑と茶色の世界に、肌色がある。
・・・人だ。人が熊の下敷きになっていた。
「お願い助けて・・・」
声の主は熊ではなくこの人だった。悲鳴の主もこの女に間違いないだろう。
「熊は死んでいるのか?」
「いや・・・たぶん気絶しているだけだと思う」
「え?マジ?」
今すぐ此処から逃げ出したい衝動に駆られるが、女を放っておくわけにはいかない。
「今助けてやるからな」
カメラと女の前ではカッコよく居なくてはいけない。そう俺の遺伝子が叫んでいた。
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