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俺は孤独だった。
クラスの輪に入るために好きでもない芸能人やスポーツ選手を頭に入れるのは苦痛に感じられた。そこまでして輪に入る価値を見出せないのだ。みんな、まるで台本でも読んでるかのように話をする。見ていて滑稽だった。
窓から差す、陽光を浴びながら、教室の端で一日を過ごす。それが俺の日課。
しかし、事件は起こった。
教室の端にあった俺の席の横に、ないはずの席がある。転校生が来た。
彼女は教卓の前で簡単な自己紹介を済ませると、俺の横の席に着く。
透き通るような肌、大きな瞳、歩む度に揺れる艶のある髪、可愛らしい少女。
問題が起こったのはそこから。なんと、彼女はクラスの輪に入らなかったのだ。
最初はクラスのみんなが彼女の周りに集まったが、自から話しかける事はない。それどころか牽制する態度をとる。
ただ凝然として、彼女は教室の端で俺が浴びるはずの陽光を浴びながら、視線を窓の外に投じて一日を過ごす。
そこには粛とした空気が張り詰める。
これは沽券に関わる問題であった。なぜなら、俺のような存在が二人もいる。これは何故かいけないような気がした。
逡巡した結果、彼女を笑わせることにした。彼女が大声で笑えば、自分のような存在が二人もいなくなるのだ。
「今、日本じゃ北に拉致された人が問題らしいね」
「……」
「目には目をで、北の奴等を拉致すればいいのに」
「……」
「おいおい、それじゃ希望者殺到で逆効果だ……HAHAHA」
「……」
凛と響いた。そっと入り込んだ風が室内を旋回してまた出て行く。
今、思えば顔から火が出るような冗談である。彼女の冷たい眼差しが胸に刺さる。
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