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その日の放課後、バイト先に堀井さんが来た。
「駿くん、今日もバイトだったんだ?」
商品の棚よりも先に、僕のもとに来た堀井さんを直視出来ず、ちょうど顎の辺りを見て会話を進めていく。
「うん、まあ」
話したいことは山のようにあるのに、それらは上手く言葉に出来ない。
「頑張ってるね」
趣味は何かとか、誕生日だとか、つまらなくたって大切なことを聞きたかった。
「駿くん?」
「あ! そ、そうかな?」
そう。やっぱり駄目だ。
意識しすぎて、何も聞けない。
彼氏はいるのかとか、好きな人はいるのかとか。
何も聞けない。
聞けないままで、堀井さんはパックジュースを買い、店を出てしまう。
僕に出来ることと言ったら、その後ろ姿を見送ることと、彼女も買った、甘すぎるカフェオレを飲むことくらいだった。
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