僕という人間

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   中学生の頃に、父が他界した。 仕事中に事故にあったらしく、その顔は見るも耐えないくらいに傷だらけで、とても眠っているだけには見えなかった。 泣き叫ぶ母と姉の横で、僕はただぼんやりと、平和な日常が変わる瞬間を感じていた。 真っ白く無機質な部屋で、泣くだけの母と姉と、立ち尽くす僕。 もう死には慣れているであろうに、傍らに立つ医者は、唇を固く結んでいた。  僕が家を守らなければ。そんな気持ちがふつふつと湧いた。 中学二年生の、桜が咲きほこる出会いの季節だった。
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