PUZZLE-駿-

僕という人間

　姉とは、とても仲が良かった。

僕より五つも上で、年が離れていることも手伝ったのかもしれないが、身内の目から見ても、姉は綺麗な人だった。

少しぼんやりしていることはあったが、姉の周りにはいつも人が集まっていた。

いつだったか、姉は僕にこんなことを言った。

「優しくするとね、自分も相手も嬉しくなるの。駿は男の子だから、女の子には特に優しくしてあげなきゃね。良いことをしたら、きっとその分、自分に返ってくるから」

その言葉は、僕の胸の奥で未だに存在感をありありと放っている。

優しい姉と、しっかり者の母に育てられ、幸せに生きていた。

まるで辛いことがなかったわけではないけれど、一晩眠れば忘れるくらいの、小さなことばかりだった。

そして、何も知らなかった。そのことが悪いとも、不幸だとも思わなかった。