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父が他界し、母はすっかり弱り果て、精神を患い、おまけに体まで壊してしまった。
姉は家計を支えるために働きだした。
昼はどこかの会社の事務、夜はコンビニで。
詳しく聞いたことはないけれど、まだ二十歳そこらの女で、体を酷使しすぎではないのかと常々不安に思った。
が、姉はやんわり「聞くな」というオーラを放っていた。
だから僕はその分、家のことをした。
家事はもちろん、母の世話も全て。
「お姉ちゃん、毎日働いて……辛くない?」
父が他界して一年ほど経ったある日。
どことなく顔色の冴えなかった姉にそう尋ねたことがあった。
姉は、手のひらを返すように笑顔になり、僕の頭を軽く撫で
「辛くないよ。働くのは好きだから。」
と言った。
こんな人になろうと思った。
どれだけ苦しくとも、辛くとも、姉は明るく振る舞っていた。
「駿は何も心配しなくていいの。行きたい高校へ行って、大学にだって行っていいのよ。男の子なんだから、しっかりしたところに就職して。それから私に楽をさせて? それまでは、お金の心配も、私の心配もしなくていいの。」
心配は、した。
父が他界してからというもの、微々たる保険金も段々と底を覗かせ始め、母の医療費や僕の学費、生活費などが重くのしかかっていたからだ。
それでも姉は、高校、大学進学までを僕に強く望み続けた。
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