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その日から、何故か人混みに行く度に、彼の姿が視界を掠めた。
「おはよう」
「こんにちは」
「こんばんは」
幾度と重ねたいつもの挨拶。
「また会いましたね」
「今日はこれからどちらに?」
「奇遇ですね。俺もそこに行くんです」
何度か重ねた、似たような話。
いつもその話だけをして、身長差と筋力の違いにより、歩き出すと広がる距離に、もどかしさを感じていた。
だから私は初めて、私から口を開きました。
「あの、だったら一緒に行きませんか?」
彼はいつものように歩き出そうとした所で止まりました。
振り向いた顔は、優しく、私を見つめます。
「喜んで。」
気づけば私は、彼との行動が増えました。
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