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しばらくすると、水嶋さんが分厚い本を持ってきた。
「はい。タウンページ!
これなら、名前から番号を割り出せるからね。
名前なんていうの?」
「……違う……違うの……」
水嶋さんの明るい声を振り払うかの様に、私は大きな声で叫んだ。
打って変わった様な私の表情に、水嶋さんは顔を顰めた。
「電話番号だけじゃないの……
自分の名前もわからないの…………」
電話番号だけじゃなかった
名前、住所、通っていた学校……わからない事が沢山あった。
かろうじて思い出せるのは、年齢だけ……。
「……う、嘘だろ……」
水嶋さんは、言葉を失ってしまっていた。
「なにか、何か手掛かりになるものは……」
水嶋さんは、私が着ていた服と身につけていたネックレスに何か手掛かりがないものかと必死に目を走らせていた。
「……あ!これって君の名前じゃない?」
水嶋さんが指を指す白いワンピースの端には、小さく「麗」(れい)と書かれていた。
これが私の名前なんだろうか
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