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妊娠が分かり、彼女の母親の猛反対もあって、堕ろすことになった。
そのとき僕が最も心配したことは、彼女の体のことでも、子供の命のことでもなかった。
「お金どうしよう!?」だった。
堕胎するために訪れたのは千歳烏山駅にある小さな病院だった。
女医が一人でやっている、採尿の紙コップを使い回すようなひどい病院だった。
だが未成年で、十分なお金もなかった僕らには、その病院しか受け入れてくれるところがなかったのだ。
女医が言う。
「人手が足りないの、麻酔の効いた彼女の移動を手伝って欲しいんだけど」
正直僕は病院に付き添うのさえ面倒だった。受験勉強の真最中だった。そんな時間があれば勉強をしたかった。さっさと終わらせて忘れたかった。
僕が返答に躊躇していると
「子の供養のためよ、そのくらいしなさいよ」
女医のその言葉にようやく僕は、
その手術に立ち会うことを約束した。
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