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「まだ、未練でも?」
「まさか!俺は自分の意思で堕天したんだ。未練なんて」
チャンミンに恋をしたことが露呈するなり、ユチョンは『神』というものから楽園を追われた。
楽園
そこは誰にも見つかることなく存在した幻。
だが、楽園はいつしか終わりを迎えようとしていた。
人間が容易にいける楽園なぞ、楽園ではない。
本来、自分の支配下に置かなければならないものと支配されていたものが対等な関係を結んでしまった。
天国への階段は日を増すごとに増えて、いつかこの街は空を失うだろう。
「楽園の様子はどう?チャンミン」
「…目も当てられない状態ですよ。神と呼ばれた方々は人間と肩を並べて酒盛りなんかをしてますからね。もう、この世を慈悲の光が包む事もないでしょう」
「そんなに酷いか・・・」
「ほら、やっぱり未練があるんじゃないですか?」
「未練というか・・・単に気になるだけだよ。あそこにはまだ楽園を信じてるユノがいるから」
「あぁ…そうでしたね。かつての貴方の恋人」
「はっきり言うなぁ」
「えぇ、ジェラシーです。いけませんか?」
「(笑)悪くないよ」
「ユノに会いたいですか?」
「会いたいより、心配かな?あいつはまじめだから」
「ユチョンはまじめではないですからね」
「どういう意味だよ」
「僕と居る事がそれを証明しているじゃないですか」
「なんだよ、さっきから。意地悪ならやめてよ」
チャンミンは口端だけで笑うと、ブリキのテレビのネジを巻きだした。
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