狂おしいほどに

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ゆるゆると肩の力が抜ける。 半開きの唇は言葉を紡ごうとするのだが、思考回路が追いつかない。 「分かってる、…分かってるから。もう、なんにも言うな。」 分かってる、なんて言うやつは本当は何も分かっちゃいない。 それでも、ただ、今は、 今だけは、与えられる甘やかしを、この人を傷つける毒を、わたしは拒むことができなかった。 ただただ獣のように、張りさける母音で壊れたこころを隠した。 泣くべき場所はこの胸であったのか、とさえ疑ってしまう程に。
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