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「今日の放課後、屋上に来て。 健」
ベタだ。ベタすぎて、きもい。
展開丸見えのメモ紙を握り締め、義理堅い歩美様は階段を踏みしめる。
ご、よん、さん、
屋上まで、あと3段。
いや、待てよ。
待て待て、歩美。
行ってフッて、歩美様に利益がないではないか。
よん、ご、ろく
帰っちゃ、だめ?
なな、はち。
…だめ。
健だってがんばるんだ。わたしががんばってあげないでどうする。
…に、いち、ぜろ。
って、屋上扉閉まってるー。うそーん。
「ばーか。」
階下の踊り場に憎たらしい健の意地悪な微笑。
あ、健。騙した。くそ野郎。
…なな、はち、じゃーんぷ。
「おいっ!ばか。」
あ、あ、ああ。
健の、顔が、近い。息がかかる。う、馬乗り。ほお。
「…お前なあっ、」
健くん、赤面中。変な顔です。
「…み、見んな見んな、さっさ立て。ほら。」
一瞬重力に逆らって体が浮くと、次の瞬間には両足の裏が地面に着く。
たまにはこういうサプライズも嫌いじゃない。
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