優とあけみ

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まだ5月だというのに真夏のような暑さだった。沖縄の夏は早かった。海辺では子供たちがキャッキャと水を蹴りながら遊んでいる。 「暑い・・・」 あけみは冷房の効かないワゴン車のなかで、うなだれていた。あけみにとって沖縄は未知の場所であり、東京との環境の差に目を丸くするばかりだ。 「ねぇ、まだ着かないの?」 「もうすぐで着くから、我慢して」 あけみの問いに、まるで子供をあやすかのように渡辺茂夫は答えた。 彼は児童養護施設「太陽の子」の副園長だった。学生時代、柔道で鍛えあげたその大きな体格から、彼は園内で子供たちからクマシゲの名で通っていた。 「暑い・・・なんで冷房つかないの?この車」 あけみはいらだちながら訴えた。 「故障してるって言ったじゃん。そんなに暑かったらもっと薄手の格好してくれば?」 あけみはこの暑さの中、長袖のTシャツを着ていた。渡辺にそう言われてもあけみは決して袖をめくらなかった。 「東京に戻りたい・・・」 あけみは窓から沖縄の風景を眺めながら、そう呟いた。 「ほら見えたよ」 渡辺の声に反応し、あけみはすぐさま前を見た。そこには「太陽の子」と大きく書かれている建物があった。
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