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「あはは。そんな言い方はやめてよ。そっちのお菓子も、『型崩れするからよしてくれー』って言ってるよ、きっと」
お土産を携えていた事に気が付いた後、はっとした表情で包み紙をまさぐりはじめる。大して崩れてないと安堵のため息をこぼした後に、それをミラの両手に渡してやった。
招かれるまま中へ入って行く。客間を目指す途中、遺跡を改修して造った大堂の広間には、熱心に祈りを捧げる人々の姿が見えた。皆一様に膝を折り、額を地につけている。
先ほど外にいた者たちが、これをするためにやってくるのかと思ったスイードは、その異常ぶりに恐怖心を抱く。
この建造物を造る際に、余ったブロックをそのまま置いて使っているようなテーブルの横に座り、もてなしを受けるスイードはそわそわしていた。
石の壁に4方を囲まれたこの客間には、スイードとミラ以外、誰の姿もなかったからだ。
(おがんでばかりいないで、お茶の一杯でも飲みにくればいいのに……)
2人きりのシチュエーション。考え方によっては、参拝客が気を利かしているおいしい状況だと思えるかも知れない。
だが、幼きスイードにはその考えは、まだなかった様だ。
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