護り人

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「午後からは私も自由時間取れるから、久しぶりにどこかへ出かけましょうか?」  一度白い前かけで手の水気を拭ってから、湯気のたつ陶器のカップを持ってくるミラが、そんな台詞をはいた。 「え? いいんですか? まだやらなければいけない事があるんだったら、俺なんて後回しでいいですよ」  本音なら心がはね上がるほどに嬉しいお誘いを素直には受けず、思ってもいない事を口にする。  毎日、毎日、寺院に通いつめていれば気持ちは簡単に、ミラに気付かれるだろう。参拝目的ではなく、こうしてお茶をすすりに来ているのだから。 「うーん、後回しになんてしていられないかも。私、もうすぐ15歳だから、本格的に巫女としてお勤めしなきゃいけなくなるし」  前かけを外しながら、白い絹のワンピースの具合を気にするミラの仕草。この姿を見る機会が減るのかと思ったスイードは、暗い気持ちになった。 「あんまり時間が取れなくなっちゃうよ」  それを聞いたスイードはうつむく。カップの中の薄茶色の水面に、自分の顔が写っていて、それに問い掛けている様に見えた。 「……用心棒がつくんですね?」 「そう。私が神様に全てを捧げるため。それだけに集中出来る様に、私を護ってくれる……人がね」  膝下まで伸びた裾をきつく握り締めるミラ。
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