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空に手のひらを向け、何かをつぶやいた後、風の振動が小鳥の後を追う。
穏やかな風が小鳥に接触するかと思われた時、風が金切り声をあげた様な高い音を響かせた。
黒衣の男から放たれた風の刄がかき消されたのだ。
「俺の曲はお気に召さなかったか? ごめんな、鳥~」
男がその声の方に視線を向けると、若草色のローブを着こんだ──詩人らしき──若者が空を仰いでいた。
「……邪魔が入ったか」
不快そうに口を曲げる男。
「どうかいたしましたか?」
「いや、何でもない。行くぞ」
黒衣の男たちは森の奥へと消えて行く。
空を飛ぶ小鳥は下にいる若者に向けて、心地よい歌を聞かせる様に鳴き続けている。
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