護り人

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 身体の仕草で部屋の中央テーブルに促された男は、白塗りで彩られた椅子に腰をおろす。  部屋に入って来た使いの女が、紅茶を目の前に差し出す。男は目をつむり、ひとつ頷いてから両手でカップをつかむ。  そして、一気飲みであっという間に飲み干すのであった。 「相変わらずお茶が好きなようだな」 「……んぐっ。ティータイムはゆっくり過ごすに越した事はないのですが、お茶だけは早い内にいただきたい。私のこだわりでして」  そんな男の言葉に、ほがらかな笑みを浮かべるレイサル。  黒のローブの隙間から、シワの目立つ手を出して指を弾くと、部屋の端にあった棚から1枚の紙がふわふわ飛んでくる。  それは、2人の間のテーブルにゆっくりと落ちて来た。 「これは、いったい?」 「単刀直入に言う。クルスト殿、あなたに1人の子供を預かっていただきたい」  身につけていた青いマントをたたんでいた最中に、思いもよらない申し出をされた男クルストは、目を丸くして、レイサルを見つめている。  射すくめる様な眼差しに、クルストは黒のさらさらした長髪に手ぐしをいれながら、少しだけ苦笑いを浮かべていた。
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