序章

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「無理なことなんて……無理かも知れないけど、俺は諦めたくないんだ!」  いつの間にか流れていた涙が、私の視線を曇らせていて、彼の顔がハッキリと見えない。挫けそうな私の、手をしっかりと握ってくれているのに。  私がここまで走って来られたのは、間違いなくスイードのお陰だ。  私1人だったから、後ろから来る追っ手たちに見つかった瞬間、諦めていただろう。  月明かりと星の道標に見捨てられた森の中。黒く色付いた木々が、前から後ろへと次々に流れて行く。 「死ななきゃいけないなんて、そんなふざけた事があるかよ!」  彼の真っ直ぐな感情があふれた。 「君は何でも自分の中に押し込んで、周りに言われたように生きようとする」  私の心を理解してくれているスイード。 「本当の……ミラは、どこにいるんだよ!」  初めて彼が私を呼び捨てにした。  彼がぐずる私の手を、無理矢理ひいて森まで逃げてくれている。この森の中の様に、先が見えない──明日が見えない──私をどこまでも……
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