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剣を悠々と目前に構えるスイード。それに臆することもなく、白いエプロン姿の女性は強い足取りで歩みよる。
そして、身につけていた藍色のジャケットのえり元を乱暴にひっつかんだ。
「何が護るためだい! 獣1匹仕留められないクセに強がるんじゃないよ、まったく」
そう言った後に女性は、光石のブレスレットを飾り付けた方の手でげんこつを握る。それがスイードの頭上に叩き落とされるまで、さほど時間はかからなかった。
13歳の少年──スイード──の事は、誰よりもお見通しの様だ。
痛みにしゃがみ込んだスイードが、頭を抑えてうずくまっていると、腰からベルトを外されて、剣を没収されてしまう。
「寺院に行くんだろう。持っていくならこんな物より、こっちをもって行きな」
投げつけて寄こされたのは、果物の美味しそうな香りがする焼き菓子を包んだ紙袋。
反射的にそれを両手でつかんだスイードは、ふてくされた様に頬をふくらませたが、芳ばしい香りに顔をゆるませて行く。
「分かったよ……行って来ます!」
手違いはあったにしろ、ようやく解放されたスイードは、大急ぎで、村の東側にある寺院を目指して走っていった。
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