護り人

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 天を目指す様に伸びた三角錐の型の寺院が、太陽の中できらびやかに光って見える。  この時間帯になると、参拝客の数も多く見られるようになる。本当にここが人里離れた森の奥なのかと、疑ってしまうほどの数だ。  暗い色の布を身体に巻き付けて参列している人々の姿を、横目に見ているスイードはいぶかしる。いつ見ても怪しい人たちだなと。 「何でみんな、こんなに一生懸命に神様をおがむんだろう?」  まだ13歳のスイードには、理解出来ない光景であった。  寺院の入り口まで続くなだらかな勾配が、地面に向かって入り込んでいる。その横に等間隔で並べられた石柱が、人々を地下へと導いていた。  そんな列を尻目に、寺院の裏口の方へとまわったスイードは、戸をノックして、中から人が出て来るのを待つ。  きしむ木の音と共に開かれた戸の奥から現れたのは、紫色の髪をゆらす1人の少女──ミラだった。 「いらっしゃい、スイード。びっくりしたでしょ? 今日は人が多いのよ」  森の小鳥たちのさえずりの様に、優しい声で語り掛けるミラ。 「少しだけ。大変そうですね。お仕事、ご苦労様です」  出来る限りの敬意をはらった言葉で、深々と頭を下げるスイードは、手にしていた焼き菓子をぶんとふるわせるほど、勢いをつけて礼をした。
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