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初めての夜の世界は───私には少し早かった様だ。
痛い程眩しいネオン。
それに照らされる彼らの芸術、シャッターの落書き。
自己主張の激しい赤、緑、ピンクの髪。
(なんて眩しいんだろう。
意外と人が多いな…。
こんな時間に眠くならないのかしら。)
いけない。
少し楽しくなってきてしまった。
口角が上がってはいないだろうか。
流石にこんな所で一人で笑っていたら、とんだ変人だ。
気を付けないと。
あ、誰かと目が合った。
もしかして変な人オーラが出ていた?
気を付けていたつもりだったのに。
……それにしても綺麗な金髪。
日溜まりみたい。
私、昔から金髪は好きなのよね。
やはり私は、危機が近付く程、危機感はなくなるらしい。
「───ねえ。」
耳元で囁かれた声で。
掴まれた肩で。
冷や汗の流れた背中で。
やっと気付くのだ。
もうその渦中にいると。
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