喰牙兄様

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あれはいつだったろうか? 詳しい日にちは俺の記憶にない。 まあ仕方ないだろう。俺はあの出来事の後、病院送りになって 数年間入院してたんだから。 あの時のことは途中までは思い出せるけど、最後はどうしても脳の記憶フォルダからは 出てこない。 それも仕方のないことか。 理由は当然ある。 だって俺はアイツに上半身を丸ごと喰いちぎられたんだから。 もちろん、俺の脳もアイツの 胃袋の中である。 今頃はアイツの排泄物と なって、どこかに行ってしまったんだろう。 今となってははっきり言ってどうでもいいことだが。 とりあえず話を戻そう。 まあ俺はある日自分の親族に我が身を喰われた。 それは俗に言う兄という部類の親族であり、同じ母の腹の中から生まれた者同士である。 喰われておいて、なんで今ここでこんな独り言を喋っていられるのか? ということもアレのくだりを聞いていれば少しは解るようになるだろう。 まあとりあえず。 自分の思いだせるところまでお話を進めてみることにしよう。
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