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乾いた音が静かな住宅街に響き渡る。
それにしても、これだけの騒ぎがあるというのに誰も助けにきてくれない。
世の中、そんなものなのだろう。
私だって知らない女性が男にいじめられていても、恐ろしくて、とてもじゃないが助けようとは思わないはずだ。
気づけば辺りは真っ暗で、上弦の月が空に浮かんでいる。
頬の内側が切れたのか、口の中で血の味が広かったところへ、再び平手打ち。
私は痛みに顔を歪めながら、口に溜まった血と唾液を吐き出した。
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