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「とりあえずそこに座れ」
座るように促せば案外素直に従った
さっきまで胡座をかきながらメシを食べていたが、今は背筋をしゃんとして座っている
その姿はどこか気品があるかのように思われた
「お前、名は?
どこの藩のもんだ
ここいらじゃ見かけねぇ面(ツラ)だな」
凄みをきかせながら尋ねる
大抵の奴は脅え、身を震わせるが
目を逸らさず真っ直ぐ答えた
「名は宵風(ヨイテ)
ただの旅人さ」
「木刀なんか持ってか」
ただの旅人ではないことは雰囲気で解る
疑わしい目を向けながら続ける
「町で浪士と一悶着あったそうだな」
「あの人が町人にいちゃもんを付け刀を抜こうとしたんですよ。
まぁ鞘から六割刀身が出たところで飛び蹴りを喰らわしましたが」
いきなりの展開に目を張った少年以外の一同
刀を持った浪士相手に飛び蹴りなど自殺行為に等しい
(※そもそもそんなことをする人自体がいないが)
それをさらりと言った少年はいよいよただ者ではなくなった
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