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雲一つない空だった。 空気は澄みきっており、いくつもの星が満天に散りばめられ、黒を鮮やかに引き立てていた。 歩く道には自分以外誰一人とおらず、下駄の音が静かに響きわたる。 「いい俳句が思い浮かばねぇな…」 はぁ とため息をつく。 ふと視線を小脇の草むらにやると、黒猫が顔を覗かし、そのまま男の前を横切ると、葉が生い茂る大木に登り姿を消した。 ―ザァァッ 宵の風が辺りを包み込む。
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