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ぼくの母さんはテンションが変な人だ。
美人なくせにど派手な格好が変を際立てて、ちょっと残念な感じがする人。
髪はピンクのロングストレートだし、携帯はきらっきらしてて目に痛い。
今日は灰色のパンツだけど、下手すればヒョウ柄のミニスカだったこともある。
まだ28歳だから、違和感なく似合っているのがまたわが母ながら変だと思う。
ぼくはまぁ見慣れたからいいんだけど、一緒に歩く由美子さんや他の人はたまったものじゃないだろう。
柄が悪いわけじゃないけど、元ヤンの雰囲気が醸し出されてるのもいつものこと。
おとなしそうな由美子さんがどうして母さんと一緒にいられるのか、たまに疑問に思ってしまう。
言動も格好も経歴も変だけど、これがぼくの大好きな母さんだ。
底なしに優しくて、とても強い素敵な人。
母さんは本当は黒い色が好きで、ぼくが病気だって分かる前までは黒い服ばかり着てた。
それなのに病気だって分かってからは、黒い色を徹底的に身につけなくなったんだ。
黒は不吉だから。喪服の色だから。
お医者さんが、この子の寿命は気の持ちようによるでしょうって言ったから、ぼくの前で弱音を吐くこともなくなった。
いつも笑って、ぼくの生に対する諦めや死への恐怖にがんじがらめになった心を救い上げてくれるんだ。
それだけ母さんはぼくを愛してくれていて、失うことを恐れている。
きっと、ぼくがいなくなったら、涙が枯れてもずっと泣き続けるんだろう。
父さんが死んだときみたいに。
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