光月と夏蛍。

2/4
前へ
/15ページ
次へ
二人とも、病院にいるのがあたりまえだった。 小学校にもめったに行かないけれど、小児病棟には友達がたくさんいたし、なにより、お互いがいればさびしくなんてない。 どんなに病気が苦しくても、二人でいれば、つらくない。 ―――― 「おはよう光月(コウキ)くん。今日の気分はどうー?」 ぼくは朝、看護師さんが点滴を替えに来ることで目がさめる。 看護師の人たちは起こさないようにそっとやってくれるけど、毎朝おなじ時間にドアをあけるから、その音で起きるのがくせになったみたいだ。 ぼくはにっこり笑っていった。 朝は好きだから機嫌がいい。 「おはよう皐月さん。今日は悪くないよ。身体が軽いから、きっと熱はないね」 「あらそう!よかった!でも、はい。熱はちゃんと測らなきゃ」 「うん、わかった」 ぼくは差し出された体温計を素直にわきに挟んだ。 しばらくしてピピッと音がなると、ひきだしから紙を取り出して37.7と書き込む。 体温は朝昼晩の3回、毎日計ることになってる。 皐月さんは体温を書いた紙を昨日のお昼の分からチェックすると、パンダのはんこを押してくれた。 「よーしちゃんとやってるね。えらいえらい!」 そう言って髪をなでてくれたとき、ドアの外からパタパタと足音が聞こえてきた。 …きた! 「お、そろそろお姫さまの登場かな?」 皐月さんが笑うと同時に、ぼくの病室のドアがカラリと開いて女の子がぴょこと顔を出す。 「こーちゃんおはよう!起きてるー?」 「おはようかほ。起きてるよ。おいで」 ぼくが少し微笑って招くと、かほは嬉しそうに駆け寄ってきた。 「おはよう夏蛍ちゃん。夏蛍ちゃんは今日もげんきねー」 「おはようございますっ!うん、かほげんきだよー!」 かほと挨拶をした皐月さんはぼくのチェックが終わったみたいで、あんまりはしゃがないのよとぼくらに言ってでていった。 「こーちゃん、今日お熱は?」 「ないよ」 「よかったぁ!じゃあ今日はいっぱいお話できるね!」 「うん、聞かせて。かほの話」 そう言って手をとりあって微笑う、これがぼくの毎朝。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加