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「あははっ、なんでもないよ。それで?」
かほはまだよく分からないといった顔をしながらも、嬉しそうに話しだした。
なんでも、かほの夢には毎晩ぼくの顔をした王子さまがでてくるらしい。
ぼくじゃなくて、「ぼくの顔した」王子さま。
かほ自身も同じ姿をした女の子になってるんだそうだけど、目線が一緒だからその女の子もかほって呼んでる。
夢のなかではちゃんとお互いの名前を知ってるのに、起きると忘れてしまうから、2人を「王子さま」と「かほ」と呼んでいるらしい。
前にきいたときは、一緒にお城を抜けだして森へ遊びにいったり、2人できれいな絵本を読んだりしてた。
お城を抜けだした日は、大抵お城の人に怒られるんだって。
2人はずっと一緒に育ってきた兄妹みたいなものなんだそうだ。
「王子さま」は「かほ」が大好きで、「かほ」も「王子さま」が大好きで。
かほが語る「ぼくら」は、いつだって幸せそうだった。
不思議なことだけど、毎晩みるその夢をかほがあんまり楽しそうに語るから、ぼくもそれを聞くのが楽しみになってた。
もともと夢見がちな子だから、そんな夢をみてても変ではないんだろう。
「王子さまがね、お花でかんむりと指輪を作ってくれたの
すごいんだよ、あっという間にあんじゃったんだから!
お花でかんむりとか指輪って作れるんだねぇ」
たとえ、かほ自身も知らないことが夢に現われていたとしても。
かほは無邪気に笑った。
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