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渚に特命が下りたのは、六月下旬のことだった。
数日前に前代未聞の事件が発生して、人事が変わり捜査本部は慌ただしくなっていた。そんな折、過去の捜査を行っていた渚に、急遽特命が下った。
特命はまずメールで通達された。過去にいた渚のケータイに、統括長から届いた。メールの最後に、詳しい話は室で行うこと、そして早急に捜査を切り上げて戻ってこいとあった。
渚は仕方なく捜査を切り上げて戻ることにした。
特命内容はふたつだった。その内容を頭の中で繰り返しながら、渚は廊下を急ぐ。
慌ただしく動いていて、渚は昼も取っておらず、少し苛立っていた。若い男の捜査員と廊下ですれ違い、お疲れ様です、と声をかけられたが渚は無視して小走りになる。
未来捜査課と過去捜査課の室に入る。
奥の席に未来警察捜査課統括長の杉野芽依が険しい表情で書類を睨んでいるだけで、他に捜査員は誰もいない。
室内はかなり散らかっている。机だけでなく、床にまで捜査資料が散らばっている。
「ただいま戻りました」
「ああ、適当に座って待っててくれ」
杉野は資料に目を向けたまま、素っ気無くいう。渚は杉野に近い席に座って待った。やがて杉野は目を通していた資料を乱雑に机に放り出し、渚を呼んだ。
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