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「昔と変わっていないみたいで、私は安心だよ」
「それ褒め言葉じゃないですよね」
「褒め言葉のつもりでいったのだがね。おっちょこちょいなところは天野らしい」
瀬戸は欠伸をして、ため息ともとれる大きな息を吐き出した。肩に手を持っていき、左右に首を捻る。
「最近は研究室に籠っていて、ロクに睡眠も取っていなくてね。烏丸のこともあって、いろいろと大変で。あー、そうだった、その話をしにきたんだった。天野、特命の話はもう聞いているかな」
渚は姿勢を正し、「はい」と答える。ここからが本題みたいだ、とかすかに緊張が走り身体が強張るのを感じだ。
「そうか。それでは任務の内容も通達があったかい」
渚はもう一度「はい」としっかり答えて、任務の内容を口にする。瀬戸は大きく頷いた。
「天野には準備が整いしだい今から30年前の、2012年に飛んでもらうことになる。烏丸は三度目の『時流歩(とるふ)』の使用で2012年に飛んだから、そこで身柄を押さえてもらう。やつはもう飛べない。烏丸の身柄確保については簡潔だが、これ以上の説明はない。何か質問は?」
「いえ、その件に関しましてはありません。ただもう一つのほうで……」
「何かな」
「私たちの任務は、『必要以上に過去の人に干渉してはいけない』という掟がありますよね。もう一つのほうはその掟に触れてしまいますが」
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