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「レディをいつまでも待たせるもんじゃないわよ。返事は?
……もう分かってるけど……」
彼女の言葉で俺は我に返った。
おっと、いけねえ。渋く、クールに……。
「もちろん、オーケイだぜ。
……でもいいのか? あんたの言った通り、俺の能力は迷惑極まりないもんだぜ」
少しだけ不安になり、俺は聞いた。
「言ったでしょ。私はもう他人の心が分かる付き合いは嫌なのよ。
それにあなたと居れば、服を『透視』される心配もいらないわ」
そう応えて、彼女は俺に極上の笑みを見せてくれた。
「じゃあ、行こうか……」
俺は彼女を連れて歩き出した。
そうか。そんな考え方もあったわけか。
赤田に自分の能力の使い方ぐらい考えろ、とか言っときながら、考えてなかったのは俺も同じってことだ。
俺は自分の能力に生まれて初めて感謝しちまったぜ。
これから俺の青春ってヤツが始まるわけだ。
いやあ、最高の気分だね。
じゃあな、あんたとはこれでお別れだ。
覗くんじゃねえぞ。おっと、俺が居りゃあ覗きは無理だったな。ガハハハハ…………。
「ちょっと! 笑ってないで、名前教えてよ。ねえ、ナ・マ・エ!」
彼女に小突かれながら、俺は幸せを噛み締めていた……。
【FIN】
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