【2】

3/3
前へ
/12ページ
次へ
そして、大方の予想通り、彼女を巡っての部員争奪超能力合戦が幕を開ける。 どっかのクラブが管理しているであろう立派な庭石が宙を飛ぶ。 光の槍が見事にハゲた学長の胸像を吹き飛ばす。 野次馬の幾人かが金縛りになって動けなくなる。 芝生が青く燃え上がる。 教授のカツラが乱れ飛ぶ。 あちこちに立つ電灯が弾け飛ぶ。 破裂した水道管から水が吹き上がる。 全く手がつけられない。まあ、手を出す気なんか毛頭ないがね。 と、平和主義者である俺に向かって、光球が迫ってきた。 ありゃあ、直撃すりゃ即死もんだな。俺の周りから波が引くように人が離れていく。 ここの学生の危機回避能力はずば抜けているのだ。 だが、俺は避けようともしなかった。別に自殺願望があるわけじゃあない。 「あ、危ない!!」 どこぞのおせっかいが叫ぶ。 ありがたいが、心配する必要はないぜ。 光球は俺に数メートルと迫ったところで、突然消滅してしまっていた。 ほらな。コレが俺の能力だ。バリアってわけじゃねえぜ。 俺の周囲では一切の超能力が力を失うのだ。 言っとくが有用な能力なんかじゃねえぜ。コントロールできねえんだから、迷惑極まりない。 考えてもみろよ。今の時代、日常的に使用している超能力。 それが俺の周りでは使えない。 友達にはしたくねえよなあ。 でもまあ、これが他人にだけ効果を及ぼすんなら面白いですんだんだがな。 俺自身も超能力は使えない。 おまけに俺がビルから落ちてみろよ。そこに世界一の念動力使いがいたって俺は助からねえ。 「おい、大丈夫か、あんた」 赤の他人の心配できるたあ、幸せ者だねえ、あんた。 「見た通りさ。何ともねえよ」 それだけ言い残して俺は食堂へ向かった。 騒ぎの真っ只中を通ることになるが関係ない。 途中で件の女の子を見かけた。 何事もないように(実際何でもないんだが……)近付く俺に彼女は期待の目を向ける。 ま、当然のリアクションだわな。 けど、俺はあっさり無視した。 何故って? 俺の好みじゃなかったし、その娘の周りには、数人の人間が頭を抱え込んで転がってんだからね。 結局、女の子が守護の対象だったのは、爺さんの時代までってことさ。 さあて、今日は何喰うかいなあ……。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加