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そして、大方の予想通り、彼女を巡っての部員争奪超能力合戦が幕を開ける。
どっかのクラブが管理しているであろう立派な庭石が宙を飛ぶ。
光の槍が見事にハゲた学長の胸像を吹き飛ばす。
野次馬の幾人かが金縛りになって動けなくなる。
芝生が青く燃え上がる。
教授のカツラが乱れ飛ぶ。
あちこちに立つ電灯が弾け飛ぶ。
破裂した水道管から水が吹き上がる。
全く手がつけられない。まあ、手を出す気なんか毛頭ないがね。
と、平和主義者である俺に向かって、光球が迫ってきた。
ありゃあ、直撃すりゃ即死もんだな。俺の周りから波が引くように人が離れていく。
ここの学生の危機回避能力はずば抜けているのだ。
だが、俺は避けようともしなかった。別に自殺願望があるわけじゃあない。
「あ、危ない!!」
どこぞのおせっかいが叫ぶ。
ありがたいが、心配する必要はないぜ。
光球は俺に数メートルと迫ったところで、突然消滅してしまっていた。
ほらな。コレが俺の能力だ。バリアってわけじゃねえぜ。
俺の周囲では一切の超能力が力を失うのだ。
言っとくが有用な能力なんかじゃねえぜ。コントロールできねえんだから、迷惑極まりない。
考えてもみろよ。今の時代、日常的に使用している超能力。
それが俺の周りでは使えない。
友達にはしたくねえよなあ。
でもまあ、これが他人にだけ効果を及ぼすんなら面白いですんだんだがな。
俺自身も超能力は使えない。
おまけに俺がビルから落ちてみろよ。そこに世界一の念動力使いがいたって俺は助からねえ。
「おい、大丈夫か、あんた」
赤の他人の心配できるたあ、幸せ者だねえ、あんた。
「見た通りさ。何ともねえよ」
それだけ言い残して俺は食堂へ向かった。
騒ぎの真っ只中を通ることになるが関係ない。
途中で件の女の子を見かけた。
何事もないように(実際何でもないんだが……)近付く俺に彼女は期待の目を向ける。
ま、当然のリアクションだわな。
けど、俺はあっさり無視した。
何故って?
俺の好みじゃなかったし、その娘の周りには、数人の人間が頭を抱え込んで転がってんだからね。
結局、女の子が守護の対象だったのは、爺さんの時代までってことさ。
さあて、今日は何喰うかいなあ……。
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