【3】

3/3
前へ
/12ページ
次へ
と、そのとき予鈴が鳴った。 おっといけねえ。俺は赤田とは違い真面目な学生だからな。 とはいえ、この日の俺は授業に集中できなかった。 『モテる能力』赤田の言ったことが頭の中から離れなかったのだ。 逆の『モテない能力』の筆頭は間違いなく俺の能力であるはずだからな。 誰が好き好んで便利な能力を失うものかよ。 そんなことを考えてるうちに授業は終わってしまっていた。 「えーー、では今日はココまで。今日のとこは重要だからな。しっかりやっとけよ」 な、何!!! 何で俺が聞いてないときに限って……、くっそー赤田のヤロー。 俺は理不尽な怒りを抱いたまま、講義室を出た。 けど、校舎を出る前に、俺は平常心を取り戻していた。 切り替えの早いのは俺の長所だ。 まったくしょうもないことで悩んでだもんだ。我ながら情けない。 まあ、ふっきったとはいえ、全く気にならないわけではない。 21歳の健康な男にとっては切実な問題には違いないのだ。 どっちにせよ、俺は赤田みたいに単純にはなれねえけどな。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加