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 桜があっという間に散っていくのを見上げていた。  窓際一番後ろ、柔らかい風が私の腰まである長い髪を少し浮かせる。 「小野原さん」  まだ聞き慣れないクラスメートの声に、窓の外から視線を外し正面を向く。  目の前の席にいる男子がシャーペンを左手に掴んで何気ない口調で話しかけてくる。 「シャー芯持ってる? HBのシャー芯」  違う人から借りてくれればいいのにと内心溜め息をつきながら、ペンケースからシャー芯ケースを出す。  それを渡して、また外に目を向けた。  だいぶ、葉っぱが多くなったような気がする。  入学式の時は、珍しいくらい真っ白な姿を見せていたのに。
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