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「日本って、変わったんだな」
「大分昔から、ですけどねぇ」
並ぶ二人の姿は屋上に。
寄り添い手を繋ぎ、空を仰ぐように寝転んでいた。
雲一つ無い晴天。
まさに二人のこれまでを象徴しているような、なんとも清々しい空だった。
「人外かぁ……」
「心配ですか?」
「まあ。いくらこの街で犯罪をしてないからって、安心はできないだろ」
「それは確かに」
「最近だと越谷に草加辺りまで指定区域にされたみたいじゃん? だから尚更心配なのさ」
結城が放り投げたそれは今朝の新聞。
一面を飾っている写真に二人とも見覚えがある。
「『駅ビル炎上。死者八名、重傷者十三名』……これじゃあ当分、南越谷は行けませんね」
「動物園行けないな」
「なんなら上野で構いませんよ?」
「……本気?」
「……本気」
どちらともなく笑い出す。
呆れを等分に混ぜた結城は苦く。
初めての彼氏を前にした優子は楽しく。
本質は全く違うのに、何故か笑顔は似通っていた。
「人外か」
「人外です」
笑いの尾を引いた一単語は、余韻を噛み締めているのにも拘らず、ひどく冷たい。
言葉の持つ不吉さが、空気を瞬時に落ち込ませた。
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