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割引債券は、三千万円以上が無記名である。脱税の手段としてしばしば使われている。しかし、よもや銀行にそんなメモがあるとは夢にも思わなかった。 大川も、兼山がしこたま金を貯め込んでいるのは知っていた。 「実はメモには、大川先生の名前も書かれていました。額は五億円と小さいですがね」 「えーっ」  大川はびっくり仰天した。まったく知らないことだった。 ―何のために、俺の名前が載っているのか。そんな必要があるのか。
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