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元来は気の弱い兼山は、そうした空気にさらに気弱になり、どこにも出かけなくなった。出れば、マスコミの餌食になるが、かといって、毎日家にいたのでは気が滅入る。好きな麻雀も止めているようだった。
「おれはもうだめだよ」
先日も、電話をかけると、兼山は弱気な声を出した。
「オヤジさん、何を言っているんですか。こんなのたいしたことじゃないですよ。一年もすれば、みな忘れますよ。一度、ご自宅に伺いますから、麻雀でもやりましょう」
そう言っても、兼山は
「そんな気は起こらんよ。アイツもこのところぷりぷりしてるしなあ」
と、気落ちしている。アイツというのは、兼山の後妻、道代のことだ。
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