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私は高校時代の同級生3人と、おしゃれなバーにいた。
「元気だしなよ、奈緒。男はあいつだけじゃないんだし」
「そうよ。だって私たちまだ25よ。これからだっていい出会い絶対あるって」
彼女たちは私のことを心配して言ってくれている。
今日だって私を元気づけようとして、このお店に連れて来てくれたんだもの。
でも・・・。
肝心の私の心には、その優しさがなかなか響いてこない。
乾いてしまった私の心。
「でもさぁ、エイジのやつ、本当に許せないよね」
『エイジ』久しぶりに聞く名前。
つい半年前まで私の彼だった人。
でも今は違う。
遠い人になってしまったんだから。
こういう言い方だと亡くなった人みたいに聞こえちゃうかもしれないけど、彼は夢をかなえるために自分の道を選んだ。
エイジは、地元では結構人気のあるロックバンド「ナイト」のヴォーカルだった。
そのバンドの活躍ぶりが、有名なプロダクションの目にとまったみたいで、スカウトされたのだ。
「俺さぁ、やっと夢がかなうチャンスもらったんだよね。こんな最高なことってないよ。だからって訳じゃあないけど、奈緒、俺たち終わりにしないか」
半年前、エイジに突然こう告げられた。
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