その11

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職員室に戻ると、校長室へ呼ばれた。 最後だし、きちんと挨拶しとかないと。 緊張しながら、校長室へ入った。 「ご苦労様でした。どうでしたか、3ケ月間を終えられて」 校長先生がにこやかに言う。 「本当にお世話になりました。とてもいい経験をさせていただきました。教師としても、私、個人としても」 私の素直な気持ち。 これ以外、言葉が見つからない。 「そうですか。えー、私の知る限りでは、石野先生の授業が急に変わったように思うのですが、何かありました?」 校長先生が、目を凝らしながら聞いてきた。 私が思い当たることといえば、ただ一つ。 「はい、ありました。私、生徒たちに日本史を教えていましたが、実は生徒から教わることの方が、多かったように思います。」 「ふむ、そうですか」 校長先生は、顎を触りながらうなずいた。 「は・・・い・・」 私、変なこと言ったかしら。 ドキドキ・・・。 「その通りですね。教師も常に教わっているんですね。だから、それに気づかれた石野先生は幸運ですよ」 そう言って、声高らかに笑った。 なんだかうれしかった。 校長先生に褒めていただいて、これからの希望につながった気がした。
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