その11

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「どう?瀬野君とはうまくいってます?」 いきなりの質問? この場所ではふさわしくないんじゃなんじゃない。 私は少し、眉をひそめた。 「大丈夫です。私、誰にも言ってませんから」 岩崎麻美はそう言って、はにかんだ。 高校生らしい、かわいらしい笑顔がそこにあった。 「先生、今日で最後ですね。先生の授業、私は結構好きでしたよ。特に今日は、なかなかよかったです」 私の胸がまた熱くなる。 そう言ってくれる生徒がここにいる。 こんなにうれしいことはない。 「ありがとう、岩崎さん」 私も彼女に、笑顔を向けた。 「おーい、麻美!」 廊下の先で、男子生徒が呼ぶ声がする。 その声に振り向き、岩崎さんが手を振った。 「実は彼なんです。ふふっ。あれから私にも新しい出会いがありましたから」 そう言って笑った。 へー、そうなんだ。彼氏できたんだね。 なんだか、私、ほっとしてる。 まあ、セノのことがあったからかな。 「先生とは、もう会うことないと思いますけど、いい先生になって下さい。じゃあ」 岩崎麻美は笑顔でそう言うと、彼のもとへ走って行った。 彼女を見送りながら、屋上のことを思い出す。 ついこの間のことが、随分昔のことのように思える。 本当にありがとう、岩崎さん。 彼女の背中に、感謝の言葉を投げかけた。
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