3152人が本棚に入れています
本棚に追加
/146ページ
「どう?瀬野君とはうまくいってます?」
いきなりの質問?
この場所ではふさわしくないんじゃなんじゃない。
私は少し、眉をひそめた。
「大丈夫です。私、誰にも言ってませんから」
岩崎麻美はそう言って、はにかんだ。
高校生らしい、かわいらしい笑顔がそこにあった。
「先生、今日で最後ですね。先生の授業、私は結構好きでしたよ。特に今日は、なかなかよかったです」
私の胸がまた熱くなる。
そう言ってくれる生徒がここにいる。
こんなにうれしいことはない。
「ありがとう、岩崎さん」
私も彼女に、笑顔を向けた。
「おーい、麻美!」
廊下の先で、男子生徒が呼ぶ声がする。
その声に振り向き、岩崎さんが手を振った。
「実は彼なんです。ふふっ。あれから私にも新しい出会いがありましたから」
そう言って笑った。
へー、そうなんだ。彼氏できたんだね。
なんだか、私、ほっとしてる。
まあ、セノのことがあったからかな。
「先生とは、もう会うことないと思いますけど、いい先生になって下さい。じゃあ」
岩崎麻美は笑顔でそう言うと、彼のもとへ走って行った。
彼女を見送りながら、屋上のことを思い出す。
ついこの間のことが、随分昔のことのように思える。
本当にありがとう、岩崎さん。
彼女の背中に、感謝の言葉を投げかけた。
最初のコメントを投稿しよう!