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「それじゃあ、俺は仕事が終わったのでこれで」
「待て。仕事はまだ残っている」
照実は久しく二人きりになったこの状況を何とか続けたい一心で、霧涼を引き止めた。
何やら小走りで去ろうとしていた霧涼は眉をひそめて振り返っている。
「何ですか?俺自分の分は終わらせましたけど」
「追加だ。コレを仕上げろ」
そう言って差し出された書類を受け取ると、霧涼はバラバラと到底目で追いつけないような速さで書類を捲っていく。
眼球はせわしなく動き、全ての書類を捲り終えた時、霧涼は満足気に微笑んだ。
「なるほど、わからん」
「読めてねぇのかよ!!」
照実は椅子からずり落ちた。
「当たり前です!俺にそんなニュータイプのような技が使えるわけないでしょう!」
思わせぶりな行動をとっておいてこの言いぐさはあんまりである。
しかしそんな事は霧涼としてはどうでも良い事らしく、何故だか呆れたような顔を見せた。
「どうせコレ会長の分の仕事なんでしょうが。俺はこう見えて急いでいるんですよ」
「む、な、何か用事か?」
「ええ、実は新しい同人誌が部屋に届いたのですが、同室のパスタ君に見られてしまう前に読まなければならなくて……」
「仕事しろ」
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