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青く広がる大海原を画布として、いくつかの大陸といくつもの島々が、或いは緑の、或いは砂色の、または赤茶けた文様のように浮かび出ている。
それはまるで、本物の絵画のように端と端を持った平らかな『世界』。
その世界のちょうど中央に、上五分の一を緑、その下のほとんどを砂色で塗られた逆三角形の大陸があった。
シア大陸。
神々のの御幸のまだまだ盛んだった頃から、連綿と続く古王国、知恵と医学を司る女神『テア』に愛された国、『アルテア』。全盛期には、シア大陸のほぼ全域に広がる大国であったが、今ではその隆盛はすっかり昔日のものとなり果て、北部の険しい山岳地帯に押しつけられるようにして、その面積・勢力ともに縮小の一途をたどっている落日の国だ。
そして、そのアルテアの南下に今や広大な国土を誇る戦いの国『ヴィヴィス』。神々の御幸の途絶えた後に興った国だが、才覚と力を司る神『ナニ』を絶対の神とあがめ、下克上可能ながら身分制をしく。
更にその南に、南部の海岸線を這うように伸びているのが、商売と航海の神である『ウレ』を信仰の柱とする新興国『バンドル』だ。シア大陸は、中部以北の海岸線を山岳地帯や、切り立った崖、情報岩礁などに囲まれているため、事実上、バンドル以外の国から大陸外へ出て行くことは難しい。
今や、それらの三国を筆頭に分割されたシア大陸は、お互いを食らいつくさんとする緊張状態にあった。
神の御手を離れ、それぞれに歩み始めた人の世において、古きが廃れ、新しきものに移ろってゆくのは世の理であろうか。しかし、古きものも新しきものも、それぞれ精一杯の時を生きているのは、神々の在りし頃より変わらないのかもしれない。
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