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一、地球は回る、心は動く
シア大陸の南端に位置する国、バンドル。大海原を背に、他大陸との交通・交易の要衝として近年目覚ましく発展してきたこの国は、その端緒を商業自治都市に発する。バンドル王家の礎となる男を商業組合長に持ったこの自治都市は、海岸沿いに点在していた近隣の同じような商業都市と手を組み、商業の自由を、どの国に対しても等しく主張し、無理を通そうとする国とは商売をしないよう徹底することにより、他国に飲み込まれることなく自由な交易を守ることに成功した。そこから、周囲の商業都市が彼らの傘下に加わり、次第に商人による商人のための国を形作っていったのだ。
バンドルの国柄は、自由で利に敏く、柔軟。大陸唯一の、港を持つ国であるため、船乗りを多く抱え、勇敢さや、気っ風の良さも特徴として上げられる。
そんなバンドルの地図上の中心より東にいくらかずれた海岸線寄りにある王都、大陸随一の港と名高いタリ港を擁するデアリに、一陣の風が吹き抜けた。
風は、熱く潮の香りを纏っているにも関わらず、さらりと心地の良いもので、船乗りや商人、異国からやってきた人々でごった返すタリ港をひと撫でし、デアリ中心地に位置するバンドル王宮の窓にかかる軽やかな素材のカーテンを揺らした。
その一つ、深い青に金糸の刺繍を施されたカーテンのかかる一室で、二人の青年が向き合っていた。
「そろそろか。」
ピリピリと、常にはない擬音語が聞こえてきそうなほど、一人で空気を張りつめさせているのは、茶の巻き毛と新緑の瞳を持つ華やかな容貌の男だ。
「ああ。」
対する男の泰然とも、どうでも良さそうにも聞こえる返事は、彼の心にすでに数度目となる炎をともす。
「本当にわかってるんだろうな!?」
「ああ。」
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