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3 始末屋
「ア、兄貴、ここっスかね?」
ハンドルを握った若い男が、下りの坂道で徐行しながら、道の右側にそびえ立つマンションを見上げ、助手席でタバコを燻(くゆ)らせている男に声を掛けた。
「あぁ、間違い無ぇ様だ。
そこから入って行けば来客用の、駐車ス
ペースが有るらしい!」
兄貴と呼ばれた男の答えに、若い男は頷き、対向車に気をつけながら、幌付きの軽トラックを、マンション入口脇の進入口へ向け、ハンドルを切って行く。
来客用の文字と矢印に従い、住人専用の地下駐車場とは反対の、敷地内の一画に設けられた駐車場へ向け、ハンドルを左へ切って行った。
来客用と言うプレートが、幾つも並んだ空きスペースへ、車を頭から突っ込んで行き、停止ブロックに前輪を軽く当て、軽トラックを停める。
「フーッ、良い御身分だ、女をこんだけ
のマンションに囲って置けるたぁ!
クククッ、金の匂いがプンプンして来る
ぜ、俺達にもツキが回って来たかね、
事務所番もこうなると、
捨てた物じゃ無ぇな」
兄貴と呼ばれた男がタバコの煙りを、
吐き出しながら卑(いや)しい笑いを浮かべ、若い男に外へ出る様顎(あご)で指図(さしず)した。
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