第6章 クリッパー 仙崎狂介

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    ほんの少し前、大地をここまで運んだ車を運転して来た男は、飯田組の準構成員で森と言う男であった。 風間に裏ビデオ製作現場へ、案内された大地は、風間を含めそこに居合わせた、3人の男達に嘘の記憶を刷り込み、まんまと彼らの組の幹部に成り済まし、目当てのレイプビデオの、マスターテープを見付け出したのである。 出所を聞く大地に、森が持ち込みで売りに来た物で、出所は分からないと言いつつ口ごもるのを、大地は見逃さず脅し付けて口を割らせた。 売りに来た男を森は尾行(つけ)、ヤサを探ろうとした様だ。 レイプをネタに奴らを喰らう積もりだったと、居合わせた者達は口を揃えて言い訳をした。 『流石はヤクザ、レイプ魔達にこれから も犯行を続けさせ、ケツの毛まで毟(む し)って行き、ヤバクなったら埋める積も りだったか』 大地を幹部と思い込んでいる4人は、目論みを素直に話した。 どうやら仕入れ代金が浮く、絶好のチャンスと思ったらしい。 「ヘマこいちまって、見失って、でも、 また来るって言ってましたんで、 こん次は間違い無く!」 尾行に失敗した森が、大地に頭を下げる。 「あぁ、ヤサを探すのは俺に任せな、見 失った場所まで案内しろ、見付けたら話 しは俺が着けるからよ、ただしこのシノ ギお前(め)えらの物にして良い、少しば かり俺に回すって事でよ」 太っ腹な幹部を演じて大地が笑う。 4人の男達が感激した顔で、一斉に大地に頭を下げた。   
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