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グレーの作業着を身につけた、2人の男は軽トラックの幌を開けると、台車を敷地内へまず下ろし、木枠付き大型ダンボール箱を、下ろした台車の上に2人掛かりで乗せて行く。
「ア、兄貴!俺で大丈夫っスか?」
「今からビビってどうする、さっきも言
ったがコイツは金を産む話しだ!
お前ぇも外に良い顔してぇだろぅが、
上手くすりゃあ、金が転がり込んで来る
かも知れねぇ、踏ん張れヤ!
それによ、コイツは本部からの依頼だ、
[速攻で行ってくれ]ってんだからよ、
今はちょっと手数がたんねぇなんて、
口が裂けても言え無ぇ!オヤジが恥をか
くからな。
まぁ、お前ぇもそろそろ、組(うち)の裏
のシノギも覚えて行かねぇとな、良い機
会だったかも知れねぇぜ」
台車を押す若い男に、兄貴と呼ばれた男が、教える様に、噛んで含んだ言葉を掛ける。
「帽子は目深(まぶか)に被っとけ、カメラ
が有るからよ!えっと803と」
背後で控える若い男に注意を与えると、男はエントランスで部屋番号を押し、呼出しボタンを押した。
[はい、、、]
スピーカーから低い男の声が応える。
「江原電気店でございます、冷蔵庫のお
取り替えの件で、夜分恐れ入りますがお
伺いさせて頂きました」
男が淀み無く台詞を並べる、相手からの返答は無く、その代わりにエレベーターホールへ続くガラス扉が、低いモーター音を伴(ともな)いながら開いて行った。
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