第1章 顔の無い男

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グレーの作業着を身につけた、2人の男は軽トラックの幌を開けると、台車を敷地内へまず下ろし、木枠付き大型ダンボール箱を、下ろした台車の上に2人掛かりで乗せて行く。 「ア、兄貴!俺で大丈夫っスか?」 「今からビビってどうする、さっきも言 ったがコイツは金を産む話しだ! お前ぇも外に良い顔してぇだろぅが、 上手くすりゃあ、金が転がり込んで来る かも知れねぇ、踏ん張れヤ! それによ、コイツは本部からの依頼だ、 [速攻で行ってくれ]ってんだからよ、 今はちょっと手数がたんねぇなんて、 口が裂けても言え無ぇ!オヤジが恥をか くからな。 まぁ、お前ぇもそろそろ、組(うち)の裏 のシノギも覚えて行かねぇとな、良い機 会だったかも知れねぇぜ」 台車を押す若い男に、兄貴と呼ばれた男が、教える様に、噛んで含んだ言葉を掛ける。 「帽子は目深(まぶか)に被っとけ、カメラ が有るからよ!えっと803と」 背後で控える若い男に注意を与えると、男はエントランスで部屋番号を押し、呼出しボタンを押した。 [はい、、、] スピーカーから低い男の声が応える。 「江原電気店でございます、冷蔵庫のお 取り替えの件で、夜分恐れ入りますがお 伺いさせて頂きました」 男が淀み無く台詞を並べる、相手からの返答は無く、その代わりにエレベーターホールへ続くガラス扉が、低いモーター音を伴(ともな)いながら開いて行った。    
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