第6章 クリッパー 仙崎狂介

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    そうして案内されたのが吉祥寺と言う訳であった。 「もしもし、うん、もう直ぐバイト終わ る、ちょっと残業になっちゃって、変わ った事ない、あぁ、帰りに買ってく、う ん、じゃね」 コンビニに入る前に携帯でミナの様子を確かめ、ホッと息を吐きながら大地はコンビニの扉を引いた。 大地が何故裏ビデオ製作現場に目を着けたのか、それは[自分が犯人ならどうするか]と、考えた所から始まった。 犯人達は何の為にビデオや写真を撮っていたのか、被害者の口封じでも無く、ビデオ等をネタに、金を脅し取る様な事もしていない。 被害者達の[泣き寝入り]を望む様に、拉致した現場近くで、女性達を解放している。 考えられるのは2つ。 1つは戦利品として収集している場合である。 自分達で行った犯罪を、皆で集まり鑑賞しあうと言う物。 暗い欲望と喜びを再確認して、悦に入っている連中である場合。 もう1つは、戦利品として残してはいるが、ダビングして金を得ようと考えている場合である。 ではどうやって違法ビデオを捌(さば)くかを考えると、やはり裏社会で流す事を考えるのではないか、旨くすれば警察の手から逃れられる。 こう考えて見れば、若い女性の少ない現金に手も出さず、脅迫して金を請求し足が着く事も無いと、犯人達は考えたのではないだろうか。 大地は2つ目の考えに掛けてみる事にした、と言うよりもそこからしか犯人に、警察より先に辿り着ける、方法は無いと考えたのだ。 今、大地が肩から下げたバッグの中に、ミナを含む12人もの女性の、レイプシーンが納められた、マスターテープが入っている。 既に販売されてしまった物は諦め、製作現場にあった物は、奴らを言いくるめて一旦消去させた。 忌まわしいこのマスターテープは、明日にも近くの学校に忍び込んで、焼却炉で灰にする積もりでいた。   
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