第6章 クリッパー 仙崎狂介

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    「気付いたか、何者だお前!? トラックに何の用があった!」 大地の目の前でしゃがみ込んだ男が問い掛ける。 男は30代始めといった歳頃で、キチンとスーツを身につけた、見るからにビジネスエリートと、言った感じの男である。 目だけで大地は辺りを覗う。 どうやらトラックの荷台の中だと分かった。 ご丁寧に照明設備も整っている。 「喋って貰えないかな、俺の後ろの奴は 気が短くて荒っぽい、あぁ、先刻承知し てるか」 冷静な語り口、とても連続レイプ犯の1人には見えない。 知的ささえ感じられる男が、何でもない事の様に大地を脅して来る。 『冷血』 探し始めた当初大地は、犯人達は粗暴で頭の悪い男達を想像していた。 それだけに目の前の男の冷静さに、鳥肌が立つ思いを味わっていた。 「サツじゃ無ぇな、身元が分かる様な物 を、何一つ持っていなかった、あれか? 例のヤク・・・」 「喋るな!」 背後の男の言葉を強い口調で、大地の前にしゃがんだ男が遮る。 「この男の素性(すじょう)も、 分からない内に、 こっちの情報を与えるだけだ!」 男がリーダー格なのか、背後の男が押し黙った。   
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