第6章 クリッパー 仙崎狂介

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    「あぁ、あんたらが組の者に、売り付け た例のビデオな、あれを上の者は離れた 所で見ていた訳さ。 持ち込んだメガネにヒゲ面(づら)の、ヒ ョロッとした男の後を尾行(つけ)る様 に、森さんは命令されこの街に来た。 そしてこの辺り迄で来て、見失っちまっ たと言う訳さ。 それから森さんはこの辺りに、男を探し に何度も来た、上からの催促は日毎(ひご と)辛辣(しんらつ)になって来たからな。 で、俺に話が回って来た訳だ。 俺の役割は大型車輌、つまりコンテナも しくはアルミルーフのトラックを探す事。 森さんには良くして貰ってたからな、 一軒一軒当たって来たのさ、まさかトラ ックを見ていただけで、有無を言わさず 鉄パイプで、後ろから撲(なぐ)られると は、思ってもいなかったがな!」 口腔内の傷の痛みに顔をしかめ、大地が言葉を切る。 「だがよ、何で俺のトラックに、、、」 筋肉質の男が疑問を口にする。 「ビデオの背景からだろうな、良く観て いればそこが荷台の中と分かる。 だが俺達にヤクザが何の用があった?」 スーツの男が大地の答える前に言葉を吐いた。 「あんたは頭が切れそうだから、薄々気 が付いてるだろうが! 相手はヤクザなんだぜ、良い物を売って くれたまた頼むよ、なんて商売する訳が 無いんだ。 タダでヤバくて客が食いつく様な、 ビデオが手に入るかも知んねぇんだ。 それも上手くやりゃあ、労せずして金が 手に入る、ヤクザなら当たり前の話の流 れさ」 スーツの男を見上げ、大地が皮肉な笑いを漏らした。   
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