第6章 クリッパー 仙崎狂介

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    「俺達を警察に売るとでも言って脅し、 今後は飯田組の傘下に取り込む積もり か!?」 スーツの男が前に出て来て、大地に問い掛ける。 「甘いなぁ。 ヤクザをそんな良い人達だと、 思ってるのかよ。 良いように使われてヤバクなったら、 人知れずこの世から消えて貰うだけさ。 勿論あんたらが逃亡したと、警察が思う 様に細工してな、そんなに掛から無い ぜ、後1時間もすりゃあ組の者が、ここ へ押しかけて来る、喰われるぜあんた ら」 痛ましい者を見る様な表情を作り、大地は言葉を終わらせた。 男達は互いに顔を見合わせる。 「そこで大人しく待ってろ!」 筋肉質の男が大地に言葉を掛け、2人が荷台の入口へ向かう。 大地はその背を眺めながら、口元だけで小さく笑った。 『旨く乗って来い、その時お前達は破滅  を迎えるんだ!』 血で汚れた指先に視線を落とし、ミナの哀しい位明るい笑顔を、大地は思い出していた。 『皮肉な物だ、自分の記憶は切り取れないのだから』 忌まわしい記憶が渦巻く荷台の中で、大地は息苦しさと怒りを内に押さえ込んで、2人の男の出方を待った。   
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